18歳未満の方はご遠慮下さい。
また、性的表現に嫌悪感のある方もやめた方が身のためです。
問題ナッシングな方はどうぞ↓
あなたのカラダのためだもの2
平原の中の真っ直ぐな道路を、一台のパトカーが走っている。
何故か車体の上のライトは不規則に弱々しく点滅し、咆哮の力強さに反して心許ない。時は深夜ですれ違う車も
ほとんどなく、他者に見られることはほぼなかったが、もしこの車を昼間市街地ででも誰かが見たなら、何事かと
すれ違う全ての者が振り向くだろう。
その車体のあちこちは歪み、酷く傷ついていたのだ。
「…無理しないで運んでもらった方がよかったんじゃん?」
「うるせえ」
格闘の末散々にやられるという場面を長時間の撮影の末終えたパトカー バリケードは、撮影スタッフや
オプティマスプライムの基地まで送るという申し出を断り、いつもの倍以上の時間をかけて基地へ辿り着いた。
自分のせいであの場面だけであれだけの時間をとらせてしまって、これ以上迷惑をかけたくないという思いと、
こんな姿を他のものに見られたくないという思いの両方からの行動だ。いくら撮影のためとはいえ、弱りきった姿を
他人、特にディセプティコンの面子には見せたくない。
ただ、一人を除いては。
「地下2階の奥でいいんだっけ?」
「そう。今日はどこもいないはずだけどな」
「へえ、ちゃんと調べてんの」
「たりめーだ」
窓からひょいと飛び降りた細い金属生命体・フレンジーは入り口のセキュリティパネルを鋭い指先で素早く操作し、
ロックを解除する。ゆっくりと坂を下ってきたバリケードのボンネットに飛び乗り、その姿が闇の中へ消えていくと、
入り口のシャッターが静かに下りて他者の侵入を完全に遮断した。
再びバリケードから降りたフレンジーは、言われた控え室代わりの倉庫に先に向かい、バリケードを迎えるべく
目にも留まらぬ速さでいくつかのパネルを操作した。よろよろと中に入ってきたバリケードが普段よりかなり遅い
速度でトランスフォームする。フレンジーが入り口のロックを確認して振り返ると、バリケードは崩れるようにその
場へ倒れこんだ。
「バリケード!」
「…あー…」
「だから無理すんなって言ったじゃん」
「しょーがねーだろ、半分は俺が悪いんだ。あんな時間かかんなきゃよかったんだからよ」
「だけどさ」
バリケードは自分を見下ろすフレンジーに笑ってみせる。
「…ま、確かにキツかったな。やっぱ元気だわ、あのお子ちゃまは」
「ジジくさいこと言うなよ」
「あいつ全力全開なんだぜ?こっちは多少手加減してるってのに」
「しないで本気でやりゃよかったじゃん」
「無言の圧力を感じたんだよ!オプティマスの!」
「…あっそ」
ため息をつき、フレンジーは指を神経アクセスポートに切り替え、バリケードの胸元まで上る。
「グリル開けて」
「ああ」
「自分で分かる範囲のダメージは?」
「右のショックが抜けかかってる。あと左手首の関節イカレた」
「あいよ」
開いたグリルから内部の神経回路をチェックする。ついでに全身にスキャンをかけて破損部分を確認すると指から
直接治癒信号を送り込む。負担をかけないよう、静かに送られてくるそれにバリケードは大きく息を吐いた。
「…痛ぇ」
「当たり前だ。俺の予想以上だぞ」
「すまん」
「謝るな。…俺がやりたくてやってんだ」
「フレンジー」
時々飛び上がる程強い信号はあるものの、治癒は驚くべき速さで進んでいく。あっという間に治された手を何度も
握りなおしては確認し、バリケードは肘をついて上体を軽く起こした。
「動くなよ」
「フレンジー」
もう片方の手でフレンジーに触れる。
「もうちょいでだいたいの基本回路は修復終わるから。あとは自然治癒でも一晩かかんない」
「…ありがとな」
いつもより少し熱い指先を感じて、フレンジーはセンサーをぱちぱちとさせながらバリケードを見据えた。
「…俺の方が、よっぽど心配してたんだかんな」
「ああ」
「いいように殴られたり飛ばされたりしてるお前、見たくなんてなかった…たとえ、演技でも」
「…」
「別に今更争ったりする気ねえけど!あんなオートボットの若造に…」
「フレンジー」
「はい、とりあえず急を要する箇所終わった!」
フレンジーは早口に言って処理を終え、足早にバリケードの手をすり抜けて身体から降りた。
「おい」
「外は大丈夫だよな、お前外装アーマー厚いし、擦り傷は明日スタッフがなんとかしてくれんだろうし」
「お前が治してくれんじゃねえの?」
「…そこまで俺?」
「うん、そこまでお前」
「…」
「まあそりゃ後でいい。来い」
バリケードは笑ってフレンジーをひょいと抱え上げ、あっと言う間にグリル上の装甲部分に座らせる。
「…バリケード」
「お前はなんともないのか」
「…自分で、確かめてみれば?」
その言葉にバリケードは指先でフレンジーを引き寄せ、フレンジーも自分でバリケードの顔に近づいた。乾いた音
がして、口唇部分が重なる。熱くて力強い信号が送られてきて、フレンジーはバリケードに軽く爪を立てた。
何か求めるような、不規則なリズムの熱い信号。
触れる熱さも重なってそれに飲み込まれそうになるが、バリケードの方で送信をやめたので口元は離れた。
「ッ、は」
「フレンジー」
「なんとも…ねえだろ?」
「…中確認しないと分かんねえ」
性急に指先が身体を探ろうと入り込んでくる。フレンジーは慌ててそれを押しとどめた。
「待っ…ちょっと待 」
「待たない」
「…お前の処置の方が、先…」
「俺はだいたい終わったんじゃねえのか」
「違う…あっち」
フレンジーがなんとか指差したのは、バリケードの両足の付け根にあるメイン衝撃緩衝器。バリケードは一瞬動きを
止め、それからフレンジーの指先を掴んだ。
「そっちはいい」
「よかねえよ、ポリスクルーザーのショック片方抜けるくらいなんだから」
「ほっといても治る範囲だろ」
「俺がやりたいってんじゃダメなんかよ!」
フレンジーは半ば叫ぶように言って、それからはっとして口をつぐむ。
「…フレンジー」
「あ、いや、えっと…」
「無理しなくていいぞ」
「してねえよ」
照れたように下を向くフレンジーにバリケードは緩く笑い、手を離した。
「…お前がしたいなら、すればいい」
「…」
「いや、これは言い方が良くないな。お前がしてくれるなら、何でもいい」
「バリケード」
「やってくれ」
バリケードは身体を投げ出して腕を下ろした。それを見てフレンジーは胸元から滑り降り、バリケードの両足の間に
屈む。指先で外装を外し、現れたそこを顎部センサーで甘く噛むように包み込むと、バリケードの足がピクリと震えた。
「…ああ」
低く呻くようなバリケードの声。それが苦痛から来る声ではないことを確認し、ゆっくりと信号を送り込む。バリケードは
その感覚に浸るように目を閉じた。
「すげえ、イイ」
フレンジーは普段尋問ツールになっている指を少し切り替え、そこへ触れさせてバリケードに直接言葉を送信した。
(ココからの方が、ほんとはよっぽど治癒が早いんだぜ)
「そりゃ…初耳だ…」
(他のヤツがいるとこじゃやれないけどな)
「ああ…そうだな」
(…お前がそんな顔してるのも見せたくない)
「ッ、あ」
(そんな声も、聞かせたくない)
「…お前が知ってりゃ、十分、だ…」
軽いスキャンと治癒と、また別の意図的なものが含まれたその信号にバリケードの息が上がる。その姿にこのまま
上り詰めさせたい気分に駆られたが、フレンジーはセンサーを離してバリケードを見上げた。
「フレンジー」
強引に胸元へ抱え上げられる。
「お前のせいだ。我慢、できねえ」
「…俺、も」
「フレンジー」
バリケードは片手で太い接続コードを取り出すと、待ち望むように集約されたフレンジーの神経プロセッサに深く
それを差し込んだ。
「あ、あ…ッ…」
「フレンジー」
「…バリケード…ッ」
流れ込んでくる熱い信号にフレンジーは胸を反らせて喘ぐ。
「はッ、あ、あぁ」
「約束通りだ…お前も、送り返せ」
「ン、ン」
「充電させろって…言ったろ」
フレンジーはこくりと頷いて、バリケードの信号を縫うように自分からもそれを送信した。コードの中を螺旋のように、
複雑にそれが絡み合っていく。
「あ、ぁ」
送り込んで、また受け止めて。スパークがじわじわと熱くなるのが分かる。
「強い、よ…バリケード…」
「まだこんなもんじゃねえぞ」
「あ…う…ッ…」
「…エアフォースワンの中のお前は、もっとよがってた」
「あぁ…ッ」
「いくら異星のデータが新鮮だからって、あんなトコであんなツラすんじゃねえよ」
強い信号が一気に流れ込んできて、フレンジーの身体中から高い金属音が鳴った。
「そんなに俺を…妬かせたいのか」
「何…言って…ッ…」
「俺は嫉妬深いからな、あの場面はラッシュでももう観ねえ」
「あ、あぁ」
「回路をもっと開け…フレンジー」
青い瞳がいつもより数段輝いて潤んだように見える。信号を強めながら、あの時のようにのけぞるフレンジーの身体を
支えて、バリケードは言った。
「アレよりもっとイイものをくれてやる。お前も、見せろ」
「バリケード ッ…!」
横たわったバリケードは黙々と治癒を続けるフレンジーを目だけ動かして見つめた。
「…身体に障ったか?」
「今更そんな心配すんなよ。俺のプログラムはそんな弱くない」
「そうか、そうだよな。あんまお前の声がデカイからさ、ちょっとやりすぎたかと思ってよ」
「…暫く口が聞けないように非合法な複合ウイルスでも組み込んでやろうか」
「はいはい余計な仕事はいいから、手え動かせ」
「治されてるくせに、偉そーに」
ぶつぶつ言いながらフレンジーはバリケードの外装処置を続ける。治癒信号での処置と、フレンジーからの直接の
「送信」で、あれだけ思いっきりやられた傷はほぼ完治した。本当はボディまで完璧にフレンジーに治してもらいたい
ところだが、少しでも休息させてやりたくてバリケードは上体だけ起き上がってフレンジーを止めた。
「もうその辺でいいぞ」
「「そこまで俺」なんだろ?」
「明日のスタッフで我慢するさ。休んどけよ。それに」
指先でフレンジーの顔をちょいちょいと撫でる。
「時間がもったいねえ」
「…バリケード」
「明日からはもう、一緒じゃないからな」
「…うん」
バリケードはフレンジーを抱えると身体を動かし、楽な体勢をとれるように自分に寄りかからせてやる。
「俺はしばらく間あくから、連れてってやるよ。観てんのはちょっと…キツいけどな」
「過保護」
「言ってろ」
「オプティマスのこと言えねえぞ」
「…そんなん自分で分かってらあ」
バリケードは自嘲気味にそう言って、改めて広い倉庫内をぐるりと見渡した。
「今日、ここ無人でよかったな」
「…そりゃあ、俺がそう仕組んだから」
「え?」
フレンジーはバリケードを見上げてくすりと笑う。
「何があっても誰も来ないように、まあ一応許可はとったけど」
「…」
「俺の十八番だからな、こういうのは」
「…そうか」
「壁を隔ててても、誰かが側にいんの、やだったから」
「フレンジー」
指先が重なる。お互いの神経回路に同じ信号が流れた。
「バリケード」
「…終わったら、また一緒だ」
「…うん」
「おーすっかり綺麗んなっちゃってー。昨日は時間かかったけど最高の画が撮れたよー」
「…迷惑かけて、本当にすまなかった」
頭を下げたバリケードに、マイケルはからからと笑う。
「いいっていいって。どんだけ君らが仲良しかもよーく分かったしね」
「…」
「フレンジーは?」
「…フレンジー」
バリケードの声に、グリルが勢いよく開いてフレンジーがマイケルを飛び越えて地面に着地した。
「おお、十点満点!」
「十点て低くねえ?」
「いやいや、オリンピック 僕らの世界で定期的に行われる競技会だけど そん中の一部の競技じゃ十点は
最高点なんだってば!」
「へえ、そりゃ幸先いいや」
ひらひら手を振って打ち合わせに向かうフレンジーを見て、マイケルがおや、と目を留める。
「…なんか昨日より随分綺麗になってない?つやつやしてる」
「…」
「君もだね、バリケード。フレンジーのお陰かな?心身共に」
「…なんとでも言ってくれ」
バリケードは昨日のこともあってか諦めてそう言った。
「俺の昨日の傷はほぼ完治してるがあいつは出番多いから全部任せてはいない。細かい傷はそっちのスタッフに
治してもらいたいんだが」
「オッケー、すぐ呼ぶ」
マイケルは側のスタッフに指示を出し、バリケードを見上げる。
「今日はずっとここにいるのかい」
「…邪魔じゃなければ」
「ノープロブレム、フレンジーが無茶しないよう見張っててくれ」
「ああ」
「じゃあ大事な大事なフレンジー、ちょっとお借りしますよ?」
「…どーぞお好きなように」
バリケードの声にマイケルは楽しそうに笑い、一歩踏み出して、振り向いた。
「ああ、バリケード」
「何だ」
「そのボディのフレンジーの爪あとは、本人に治してもらってな」
「!」
慌てて身体のあちこちを見たバリケードを見て、満足そうにマイケルは去っていく。
「…底意地の悪い…」
呟いてばつ悪そうに息をついたバリケードが揃ってやってきたオートボットを視界に止める。
彼らはいっせいに送信してきた。
(過 保 護)
ラブラブバリフレでした…やりすぎかしら…
てゆーかありがとう!バリのメイン衝撃緩衝器、あの場所にあってくれて!(笑)
それを確認するためにあのムービーガイド買いました!!