黒蜜

 

 

バリケードはいとも簡単に外装を外すとそれを投げ捨て、露になったそこに指先で触れた。
「あ…!」
「ちょっと待ってりゃ、脚の痛いのなんて忘れちまうさ」
「や、めろ…」
「口ではそう言うけどな、そのうちお前が自分で望むようになる」
「バリケード…ッ」
「新しい感覚を開拓してやるよ」
指先から先程とは違う信号が送られる。アイアンハイドの身体がぎゅっと強張った。
「あ、あ」
「いい反応だな」
「や…」
「…アイアンハイド」
バリケードは送信を続けながら、アイアンハイドを上目遣いに見た。
「新しい感覚と言ったが…お前にとっては新しくもなんともねえみてえだな」
「!」
「違うか?」
「ああッ…」
一段と信号が強くなる。
「もう開拓済みなんだろ?大分前に」
「あ…あ…」
「誰だ?あのよく一緒にいる始祖評議会の医者か?」
「あ…!」
「それとも調子のいい副官か?」
質問するごとに信号の強さと速度を微妙に変え、指を増やしつつあらゆる方向から送信する。その度に大きく
開かされた脚がびくびくと震えた。
「まさか、あの斥候部隊の若いヤツじゃねえだろうな」
「ッ…あ、ぁ」
「…オプティマスは、違うだろうな」
「…や、め…ああ…ッ!!」
強い信号に身体が跳ね、背中を押し付けた瓦礫がぱらぱらとこぼれ落ちる。
「…なんてこった、驚いた。まさかお前がね」
「あ、う…」
「お堅いヤツだとばかり思ってたが、そこまで淫乱だったとは」
送信を続けながら、バリケードはクックッと楽しそうに笑った。
「…だ、まれ…ッ…」
「説得力ないぜ、アイアンハイド」
「う…ああ…」
「そんだけやられてりゃ、イイ声も出るはずだ。オプティマスもオプティマスだ。自分を護らせといて、仕事が済んだら
その護衛をさんざん可愛がってるとは」
「…よ、せ…ッ…」
「まあ、別に俺はどうでもいいけどな」
バリケードはそう言ってそこから指を抜いた。再びアイアンハイドの上に乗ると、脚で軽く身体を押さえつける。
「未通なら優しくしてやろうと思っていたが…これなら心置きなくやれるってもんだ」
「や…」
「俺にもイイ声、聞かせてくれよ」
接続コードを数本取り出し、バリケードは開けた装甲から一気にそれを内部へと差し込んだ。
「あ、あ    ッ!」
一度にやって来た強すぎる衝撃にアイアンハイドは声を上げ、大きく胸を仰け反らせる。
「俺とお前の体格差考えたら、こんぐらいで丁度いいだろ」
「ああッ、や…」
「それとも、いつもやってるデカイ奴らに比べたら物足りないか?」
「バリ…ケード…ッ…」
「…そんな声で俺を呼ぶんじゃねえよ」
「は…ッ」
信号は複雑に内部へと入り込んでゆく。バリケードならではの特殊なそれは経験のないもので、いつしか痛覚を忘れ
機能するあらゆる回線が快楽の波に侵食される。
「あッ、あ…」
「アイアンハイド」
バリケードはアイアンハイドの顎を掴んで自分の方へ向けさせた。
「こっちへ来いよ」
「あ…ッう…」
「その方が、お前の性にあってると思うぜ」
「…い…やだ…」
「それに、お前の知らないもっとイイもんを身体に教えてやれる」
「…そんな、もの、いらねえ…ッ…」
「その割には反応してるけどな」
「あああッ…」
「来いよ、俺と」
「断る…!」
「強情だな」
「…殺、せ…」
アイアンハイドは強くバリケードを睨みつける。
「こんな…回りくどいことを…せずとも…」
「嫌だね、殺したらそれまでじゃねえかよ。折角ならな」
「は…ああッ…」
「どうせなら楽しい方がいいじゃねえか、お前だって嫌じゃねえんだろ?正直さ」
「黙れ…ッ…!」
言葉とは裏腹のアイアンハイドの反応を楽しみながら、バリケードは信号を強く送信する。それを続けながら、手を
放して頭部のセンサーに軽く触れると、口を開いた。
『フレンジー、聞こえるか』
「!」
アイアンハイドが目を見開いてバリケードを見る。その視線を軽く流し、バリケードはさらに続けた。
『フレンジー、今手え空いてるか?…ああ、悪いな。…ちょっと頼みがある』
「バリケード…あ、あッ…」
『…ああ、この間のアレ、出来てんだろ?こっちにそれ送れるか?』
「…う…ッン…」
バリケードは送信をやめることなく会話を続けている。熱く強い信号に悶えながら、バリケードが何事か工作しようと
しているその相手があのフレンジーともあって、アイアンハイドは身を捩った。
『…うん、まあ、ちょっとな。…今取り込み中だ、後で教えてやる』
「あ、ぁ」
アイアンハイドの反応にバリケードは緩く笑う。
『…ああ、じゃあプログラムだけでもいい、俺でもなんとかなんだろ?…そうか、じゃあ頼むわ、悪いな』
「う…」
バリケードの手がセンサーから離れ、会話の終わりを告げた。冷静に考えればこの状況で広範囲に向けた会話の回線
など危険極まりないことぐらい分かりそうなものだが、今のアイアンハイドにはそこまで考える余裕がなかった。
「…さて、気分を削いで悪かったな」
「は…」
「もうちょっと出力をあげた方がいいか?」
「や…あ…ッ…」
「アイアンハイド」
バリケードはアイアンハイドに顔を近づけ、強く口唇部分を覆う。
「ッ、ふ…」
「相当、慣らされてんだな、奴らによ」
「はぁ…ッ…」
「もっと声をあげろ。気持ちイイんなら、言えって」
「あ、あ…」
アイアンハイドは力なく首を横に振った。潤んだ光を帯びた瞳は普段の強さを失い、快楽に翻弄されている。漆黒の
屈強な身体は自由が利かず、機能しない腕が崩れそうな身体を支えるためだけにわずかに震え、信号が送られる
たびに声と荒い息が漏れる。
「イイ、って言えよ」
「ッ、は」
「アイアンハイド」
「あ…ああッ…」
「誰よりも、俺の方がイイって言ってみな」
「うッ…あ…」
声をあげながらも、アイアンハイドは否定するように首を振る。バリケードは強引に顔を自分へと向けさせると、視線を
強くあわせて囁いた。

「言え」
「…や…」

 

「…オプティマスよりイイ、って、言えよ」

 

その名前が出た途端、コードを繋いだ箇所がじわりと熱くなるのが分かった。

 

「…悪い国家元首様だな」
「あ、ッあ…」
「大事な友人を、ここまでずぶずぶにさせちまうとはよ」
「…ッや、ああッ…」
「あんなデカイのを受け入れてんじゃ、まだこれじゃ足りねえだろ、アイアンハイド」
バリケードは力を入れてアイアンハイドの身体を押さえつけ、一度コードを引き抜くと再度強めにそれを突き入れる。
さらに強く熱を持った乱雑な信号が体内を流れ、耐えられなくなったアイアンハイドの回路が限界点を迎えた。

 

 

叫ぶような、掠れた声。慣れ親しんだ友人の声が、最後に自分を呼んで果てた。
傷だらけの巨体は力を失ってそこにある。内蔵銃を振り出そうとしてそれはやめ、立ち上がろうとしてそれもやめ、
アイアンハイドの前に座ったままバリケードは閉鎖回線を開いた。
(フレンジー、聞こえるか)
(あいよ、お前今何やってんの)
(救助待ちだよ)
(えれえ時間かかってんな、なんかあったか?)
(まあな。…ちょっと傷が酷いんだ。この間のアレ、俺に直接送れるか?)
(えー?まだ微妙に試作品なんだけど)
(一応出来てんだろ?遠隔操作出来るプログラムが実用化されたら脅威だろ、俺が試すから送ってくれ)
話しながらバリケードはアイアンハイドに近づき、自らが傷つけた腹部の損傷具合を指先で確かめる。
(お前の持ってるシステムでどうにかなんないの?)
(…まあな)
(…)
(頼む)
(…なんだか知らないけど、データ取れよ)
(悪い)
(お前だからやるんだからな)
(分かってるって。頼りにしてますよフレンジー様)
(やめろ、気持ち悪い)
強引に回線が切られたのと同時に、フレンジーから新しいプログラムの信号が送られてきた。体内の治癒システムで
それを瞬時に加工し、指先からアイアンハイドへと送信する。
「…う…」
触れた瞬間の熱さに、アイアンハイドの身体がぴくりと動いた。瞳が薄く青色を灯す。
「…何、してる」
「…」
「…バリケード」
「黙ってろ」
「何、を…」
「うっせえな、変なモンじゃねえよ」
「よせ…」
「黙れ」
バリケードはぴしゃりと言って、アイアンハイドの顔を見ずに処置を続けた。アイアンハイドは少し驚き、ただじっと
されるがままになってバリケードを見つめている。暫くして、バリケードは立ち上がって言った。
「俺がぶっちぎったとこだけは治ってるはずだ。フレンジーの最新作だよ。上手く機能するかは試作だから微妙だが、
悪くなることはない。あとはお前の先生に治してもらえ」
「…」
「いくらお前だって異質の信号なら分かるだろ。れっきとした治癒システムだ」
「…礼は、言わんぞ」
自分を見上げるアイアンハイドにバリケードはふっと笑う。
「そんなもんいらねえよ。俺がやったとこを元に戻しただけだ」
「バリケード」
「全部治したら今の俺じゃ敵わないからな」
「…後悔するぞ」
「そうかもな」
バリケードはつとセンサーに手を当て、閉鎖回線を開く。かなり離れた距離だが救助が来たという知らせに、短く
会話してから回線を閉じ、機能しない左腕をあげてアイアンハイドの眉間を狙う。
「今度会う時は確実にやるぜ」
「俺の台詞だ」
アイアンハイドも右腕をあげる。
距離を置きつつも、拳が重なる。その仕草はまるで、お互いを讃えるように見えて。

だが、もうそれは叶わなくて。

 

「…甘いな、俺も」
バリケードの呟きはアイアンハイドに届くことはなかった。

 

ゆっくりと脚を引きずり、バリケードが消えてゆく。その姿をぼんやりと見つめて息をつくと、突然回線が開いた。
(アイアンハイド!聞こえるか?)
(…ああ)
(やっと見つけたよ、回線が今まで何故か繋がらなかったのだ。すまないね。怪我は酷いのか?)
(ああ)
(すぐに行くよ)
(…ああ…ラチェット)

 

それは黒く甘くて残酷で。
とろり蕩けて甘く蝕み、名残惜しくも後を引く。


いろいろすいません…オレ何やってんのかな…(死)
なんでこっち先浮かんじゃったんだろう…しかも張り切って…
元の設定から始めようよ…(笑)
でも楽しかったです…完全創作なので真剣に反応をお待ちしています…
そして久々に濃いエロかけて楽しかったです…

 

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