5

 

「…クルル」
「なんか問題あるかい?」
「いや、そうじゃない」
 クルルが新しく開発したという戦闘用のバディシステムタイプのエアバイク。やはりこれも試作だからと予め言われてギロロは操縦を任されていた。後ろでパソコンやら他のシステムやらから手を離せないクルルを気にしながらも、強めにギアを入れて一気に加速する。
「先輩、ちょっと強いよ、もすこし丁寧にさあ」
「そうも言ってられん!」
 そう言った次の瞬間に機体が下からの強い力に飛ばされてほんの少し揺れた。
「!」
「…いやいや、予想外だねェ」
「悠長に言うな!」
「そうは言われてもねえ、俺のせいじゃねえから」
「…だが、お前は言ったな。このちょうど反対側の位置が火山帯だと。この衛星はきっちり測ったように星の半分の位置から向こう側が、地形的にも物質的にも、生命体が存在できる場所ではないと」
「ああ、言ったな」
 その時機体は前から飛んできた何かを避けるように鋭角を描く。ギロロは叫んだ。

「今、正にその『向こう側』にいるんじゃないのか!?」

 

 クルルは曲がった時に思い切り機体にぶつけた肩をさすりながら言った。
「んー、そうだなあ」
「そうだなあってねお前…」
「もうちょっと行ったら、抜けられるかも」
「どのくらいだ?」
「分かんね」
 たまらずギロロは振り返る。
「クルル」
「予測で申し訳ねえけど、さすがに正確には今はちっと無理だわ」
「…すまん」
「まあちょっと我慢してくれよ。これもうすぐ終わるから」
 口調は相変わらずだが、クルルの表情は技術者のそれだ。この数日でギロロは普段あまりうかがい知ることの出来ない『クルル少佐』の真髄を見せられてきた。もちろん実戦で使用してこそ実感しているが、この男がケロンの戦闘力やシステムをほぼ一手に担っているのだと改めて理解した。
 だからこそだ。
『一生懸命努力してるようなトコを見られるのは、カッコ悪い』
 そう常々言うものの、もちろんクルルが努力していないわけではない。あの人を小馬鹿にしたような顔の裏で、あの傲慢な態度の裏で、自分には想像も出来ないような血の滲む程の努力をして、あれだけのものを生み出しているのだ。
 前方を確認しながら、真剣に画面と向き合っているクルルの姿を視界の隅で見つめる。
 

 適当そうな返答も、曖昧な態度も、本気か冗談か分からないたくさんの言葉も。

 クルルらしさなのだから、しょうがない。
 その真意を分かるのは…
自分だけで十分。
「…」
「先輩」
「何だ」
「あんま見つめないでくれよ、照れるから」
「…自意識過剰だぞ」
 ギロロはクルルに表情を悟られないよう、すぐに顔を戻した。ハンドルを握りなおす。
「もう少し、速度上げるぞ。とりあえずこのまま直進する」
「あいよ」
 暫く行くと、危険地帯を抜けたのか辺りは静寂に包まれた。

 

 

 ハンドルを握ったまま、ギロロは安心したように身体を背もたれに預けた。大きく息を吐く。
「抜けたな」
「そうみたいっすね、お疲れさん」
「お前は終わったのか」
「うん、だから運転変わるけど、ちょっと一服させて」
 クルルが煙草を銜えて火をつけると、それをギロロがすいと奪い取った。
「先輩」
 抗議しようとクルルは身を乗り出す。が、ギロロがそれを自分で吸っているのでクルルは驚いた。
「…どしたんすか」
「たまにはこういうのもなきゃ、やってられん」
「…へえ」
 クルルは緩く笑って、改めて自分のために煙草に火をつけ、深く吸い込む。そして機体を進めていくギロロの背中をじっと見つめた。
 ギロロは唇の端にそれを挟んでいるだけのようで、クルルのようにじっくりと味わうつもりはないらしい。紫煙が機体の横を薄く流れてゆく。クルルはまた少し身を乗り出して、ギロロを覗き込んだ。
「何だ」
「先輩、煙草銜えてるとこカッコイイっすね」
「…」
「似合うよ」
「俺はお前のように常々こんな身体に悪いものを取り入れる気はない」
「俺から摂取するくらいで十分?」
「お前はコレよりもっとタチが悪いしな」
 そう言ったギロロはクルルの言葉にか、自分で言った言葉にか分からないが照れているようだった。それにはあえて突っ込まず、クルルは身体を戻した。
「そーすか」
「…で、実際どうなんだ?」
「何、いきなり」
「何じゃない。この星だよ」
 あっさりとギロロは話題を切り替えた。もう少しひたってくれてもいいのにな、と思いながらクルルは言った。
「とりあえず、住めるような星じゃないねえ」
「さっきのはどういうことになるんだ?」
「んー」
 境界線で分けられたような危険地帯を回避したはずなのに、気がついたらまたそこにいた。もちろん時空を移動したとかそういうわけでもない。それだったらクルルがその瞬間にまた移動できるはずだ。
「…星自体が生きてて、地形が勝手に動いてるってことになんのかな」
「…」
「ほんとはもう少し細かいとこやりたいけど、あっちが危険すぎっからな。俺らが体験したのと、分析上じゃそういうことになるな。前の情報部隊は敵に襲われたのもあって短時間しか滞在しなかったから、遭遇しなかったんだろ」
「星の本能なのか?他の物質を受け入れない、とか」
「まあ、多少ファンタジックだけど、そうかもね」
「ふーん…」
「演習に使ったら面白いんじゃね?」
 クルルは冗談っぽく言ってみるが、ギロロは真剣に考えている。
「うーん、まあ、いいかもしれんが…いつどのように地形が変わるか分からんとなあ…」
「だいたいの予測は出来るぜえ」
「ああ、しかし予測できてもこのレベルではうちの連隊では…」
 ギロロの思考は別の方に飛んでいるようだった。クルルはため息をついて画面に目を落とす。
「先輩」
「…ん、悪い、何だ」
「もすこし先で、降りれるかな」
「さっきみたいなことがなければ、可能だが」
 クルルは煙草を銜えたまま、キーボードに指を滑らせた。
「なんか違う反応の磁場がある。ついでにちょうど本部の頼まれ事も済ませられそうだ。あと1分くらい進んだら地形がなだらかになるから、降りてくれ」
「ヤー」
「今んとこ生体反応ないけど、警戒ヨロ」
「ヤー。悪いが、後ろは頼む」
「了解」
 ギロロは片手にライフルを構え、辺りを見回しながら慎重に機体を進めてゆく。後方警戒を一応クルルに頼みはしたが、実際のところクルルは画面に向かっていてそれどころではないだろう。もちろんクルルならばそれでも反応が遅れるようなことはないが、ギロロは自分に出来ることを精一杯したかった。クルルの代わりに警戒やもしもの場合の迎撃はいくらでも出来るが、クルルが今やっていることを代わりにやることは出来ない。
 クルルを守ること。
 任務に、やりたいことに専念させること。
 それが自分の役目だ。
 クルルもそう思っているだろうし、いい意味でも悪い意味でもそれが当たり前だと思っているだろう。
「先輩」
「ん」
「少し先に、丘陵があるだろう」
「ああ」
「先輩の目で見て、どうだい?」
 ギロロは警戒の目を緩めず、言われたその低い丘をざっと見回した。
「…緑があるな。さっきみたく急激に変化するのではないのなら、安全そうだ。隣に岩場のようなものがある。何の物質かは分からんが、所々光って見える」
「了解。今んとこ物質的に危険なもんはなさそうだから、いちばん見晴らしのよさそうなとこで降下」
「ヤー」
 少しして、機体はゆっくりと丘のてっぺんへ静かに降り、動きを止めた。
「…問題ないか」
「ノープロブレム。先輩引き続き警戒ヨロシク。暫くここに留まりたい」
「ヤー。機体周囲異常なし」
「いやいや、驚いたね」
 クルルは調査ポッドから簡易システムを転送して周囲の調査をそれに任せる。キーボードを叩きながら楽しそうに笑った。
「どうした」
「その、白い岩場があるだろ。ちょっと青みがかって、きらきらしてるやつ」
「ああ」
「ありゃ、金だな」
「ほう」
「俺の専門じゃねえからよくは分からねえが、この範囲ならかなりの埋蔵量だな。ま、データだけとってあとは専門に任せるさ。質がよけりゃ資源面でも予算面でも利益になるだろ」
「この星が手に入ればの話だがな」
「まあね。先輩ヒマだろうけど、宜しくな。もしまた急に『場所』が変わった時のフォローも」
「それが俺の仕事だ。任せろ」
 辺りは静かだ。クルルの叩くキーボードの音と、コンピュータの器械音だけが響く。
 そのまま二人は約1日をその場で過ごした。

 

 周囲を時間をかけて見回し、ギロロは息をつくとステンレスのカップにコーヒーを注いだ。ランタンの火をすぐに消し、警戒態勢を緩めないまま、こちらに背を向けているクルルに声をかける。
「クルル」
「あいよ」
「少し休憩したらどうだ」
「うん、もうちょっとで終わるから」
 ギロロはそのまま隣に腰を下ろした。
「悪ィね先輩、疲れたろ」
「いや、大丈夫だ」
「こんなやりがいのない警護じゃ、飽きねえかい」
「何を言う。このように本当にいつ何が起きるか分からない状態が、いちばん集中力が必要なのだぞ」
 ギロロがそう言うと、クルルはくっくっと笑った。
「いや失敬。そりゃ俺には無理だなあ、俺は常に圧倒的なスリルを求めてるからよ」
「…」
「ほい、終了、っと」
 タンタン、とエンターキーを強く叩いて、クルルはギロロに向き直る。
「コーヒー貰うよ」
「美味くはないぞ」
「贅沢は申しませんぜ」
 クルルは一口それを飲んで彼なりに満足して頷くと、ギロロに寄りかかった。
「…クルル」
「やれやれ終わったっと。思ったより収穫あったな」
「そうか…それは、よかった」
「先輩のお陰ですよ」
 クルルの口から出た言葉にギロロは驚く。
「…気味が悪いな」
「うわ、ひでえ言われ様」
「普段の自分を振り返れ」
「随分だな先輩、本心なのに」
 煙草に火をつけて、うまそうに煙を燻らす。
「今まで誰がこうやって警護についても、こんなに集中出来ることなかったぜえ、俺」
「…」
「先輩だから特別ってのもあるかもしれねえけどさ。先輩なら何の心配もねえし、俺にノッてくれないのはつまんねえけど余計なことも言わねえし。俺はアンタといりゃあ、自分の好きなことが好きなようにやれるんだ」
「ク…」
「ありがと、先輩」
 そう言ってクルルが自分の頬に手を伸ばしてきたので、ギロロはその手を掴むと身体をぐいと押しやった。
「作戦中」
「…つれねえなあ。いいじゃん一応終わったから」
「じゃあひとつ教えてやろう。ケロンに帰るまでが作戦だ」
「そりゃ長ぇよ。ポッドに帰ったらでいいだろ。俺何のためにこんな必死にやってると思ってんだよ」
「…なら、戻るぞ」
 ギロロはすっと立ち上がってクルルを見る。クルルは煙草を地面に押し付けると肩をすくめた。
「それがすぐ帰るわけにもいかねえのさ」
「終わったんじゃないのか」
「うん、まあそうなんだけど、折角あの地形変化もないし、帰る道すがら出来るもんは調査しときたいから」
「…」
 ギロロの訝しげな表情にクルルはちっちっと指を振る。
「おっと、こりゃ俺の趣味じゃないぜ。ちゃんと理由があるんだ。俺だって仮にも少佐だからなあ、ケロンに出来るだけ有益なモン持って帰りたいからよ」
「…分かっている」
 ギロロはまた周囲を見回すと、先に立って歩き出した。クルルはよっこらせ、とパソコンを抱えて立ち上がりその後を追おうと一歩踏み出す。
 と、ギロロが立ち止まり、振り返った。
「クルル」
「先輩?」
「何か来る」
 ギロロは言ってすぐにクルルの前まで戻り、クルルを守るように身構える。
「何だい」
「分からんが、勘だ」
「さすがに何度か経験すると分かってくんのかな、さっきの地形の変…」
 クルルが言いかけたところで、突然目の前の地面に亀裂が走った。
「!!」
「クルル!!」
 ギロロはクルルを抱えて亀裂を避けるようにジャンプする。先程まで二人がいたそこは地面が大きく割れ、穴の開いたそこから得体の知れない巨大な生物が顔を出していた。
「な…」
「グロウ星人の突然変異型だ。何故こんなところに…」
「…っ…」
「クルル、怪我はないか」
「…」
「クルル!」
 ギロロの至近距離の怒鳴り声に、いきなり現れた生物に気を取られていたクルルははっと我に返る。
「…あ…先輩、悪い…」
「何をぼんやりしている!怪我はないか!?」
「ああ、なんとも、ねえよ」
 そうは言っているものの、クルルの口調はいつもより若干弱かった。そしてクルルの手が自分にしっかりとしがみついているのを見、ギロロはライフルを構えてクルルを強く抱えなおす。
「クルル、一気にエアバイクのところまで飛ぶ。しっかり掴まっていろ」
「!」
 粘液を纏った生物の顔が二人の直前まで伸びてきた瞬間、ギロロは利き足に重心を乗せ、飛び上がった。素晴らしい跳躍力でバイクの上まで舞い上がり、音声認識を作動させる。
「エンジンスタート、5秒後、全開!調査ポッドに最高速度で帰還する!!」
 力強いギロロの声に応えるように咆哮をあげるバイクに飛び乗るとクルルを少し乱暴に座席に押し込み、ギロロはハンドルを握った。
「本気で掴まっていないと、落ちるからな!出るぞ!」
 ギロロの声とほぼ同時にバイクは全速力でスタートした。
「…く…」
「クルル!」
「…」
「大丈夫か?!」
 パソコンを抱えたままクルルは機体に必死で掴まり、赤い背中を見つめる。
「…なんとか」
「後ろ、見れるか?追ってくるか?」
「ああ…距離は遠いけど…」
「よし、こっちの方が早いな。さすがお前の作品だ」
「…増えてるみてえだ」
「何っ?」
 ギロロはちっと舌打ちした。今はライフルを構える余裕はない。ちらりと機体の小さなモニターを見る。
「あと25でポッドに着ける。すぐ離脱だ。調査の残りは悪いが、暫く出来そうにない」
「…ああ、分かってる…」
「開けろ!!」
 ギロロのその声で目前に迫った調査ポッドのドアは一瞬で開いた。バイクごと中に突っ込むと、ギロロはクルルの身体をひょいと抱えあげメインモニターの前に乱暴に座らせる。
「…いてえよ、先輩」
「いいからすぐ離脱させろ!お前の傑作、使わせてもらうからな!」
 この緊急事態だというのにギロロはにやりと笑った。ボタンを押す。
「コンバット・オープン!」
 ギロロの為に造られたその特別迎撃装置が作動するのと、クルルがなんとかポッドを離脱させたのが同時だった。キュン、と音を立てて、機体は上昇する。遥か遠くに本体から分裂したようにいくつもの頭を伸ばしたあの生物が見え、ギロロは愛用のライフルの照準を禍々しい色をしたそれに定めた。
「悪いな」
 躊躇なく引き金を引く。やがて、小さく叫び声をあげながら生物が地面にゆっくりと倒れこむのが見えた。
「クルル」
「…なんだい」
「凄いな。まるでシミュレーションのようだが、感覚だけはリアルだ。さすがお前だ。見事なものだ」
 照準の先とモニターを見つめながら、ギロロは背中合わせに座っているクルルに言った。
「見事なのは先輩だ。たいして練習もしてねえのに一撃だぜ。まあ、先輩仕様にしてあるし、アンタなら初めて使おうとなんだろうと身体が勝手に動くんだろうがよ」
 クルルはやっと心地がついたように深く息を吐く。ギロロはちらりと後ろを振り返った。
「おい、大丈夫か」
「なんとか、な」
「しっかりしろ、あんなものでびびるお前ではないだろう」
「悪ィ、ふいをつかれたもんでな、現場は久々だったしよ…」
 気持ちを落ち着かせるように、眼鏡をついと指先で軽く直す。
 クルルは技術部専門とはいっても、並の技術屋とは訳が違う。今回のように自分が直接調査地へ向かうこともよくあるし、実戦の経験だって少なくはない。確かにギロロなどの戦闘兵とはレベルが格段に違うが、意気地のない下士官よりもよっぽど使える。滅多なことでは動じないクルルの珍しい姿に、ギロロはモニターを確認してからライフルを持ったままクルルの前に立った。
「先ぱ…」
 クルルの顎を掴んで、噛み付くように唇をあわせる。
「…!」
 そのギロロの行動の意外さと、触れた熱さにクルルは動けなくなった。

 自分と同じケロン人でありながら。
 自分と同じ軍人でありながら。

 自分とは違う、年齢も経験も積み重ねていながら。
 自分とは違う、熱き魂を持っていながら。

 

 なんと自分とは違うことだろう。…そして、こんなにも違う自分を、なんと大きく包んで、受け止めることだろう。

 

 ギロロは乱暴に唇を離すと、クルルの顎を掴んだまま見据えた。
「正気に戻ったか?」
「…勃っちまった」
「それは自分でなんとかしろ」
 あっさりと言ってクルルを座席に押し付け、特殊モニター側へ戻る。
「なんとかったってねえ…あ、じゃあ、コレ早く終わらせりゃ先輩がなんとかしてくれるってこと?」
「いいからお前はお前の範囲で迎え撃て。まだ来るからな」
「だってさっきぶっ潰したんじゃ…あ、ほんとだ」
 クルルはモニターに現れたいくつかのポインタを確認し、キーボードを操った。ギロロはその場でもうひとつ武器を転送させて構える。
「俺が潰した時にあげたあの叫びに、同族を呼び寄せる音波のようなものが含まれていると聞いている。突然変異型でも、それは一緒なんだろう」
「でもあいつらあんま自分の生息地からは離れられないんじゃなかったかい?」
「半径1000以内なら来るな。スピードはないはずだが、さっきのヤツは意外と速かった。だからお前は俺のモニターが正面に来るように常に機体を操れ。もし取りこぼしがあったら悪いが頼む」
 言って正面を見つめると、ギロロは低く笑った。
「…あんだよ、先輩。そんなにやりたかった?ほんと、根っからの戦士だな」
「いや、それもあるんだが…」
 トリガーに指をかけたまま、瞬間座席に背を預ける。少しの距離はあるけれど、その向こうにクルルの背中。
「お前と背中合わせに戦うなどということが、今後またあるだろうかと思ったら、ついな」
「…」
「俺はお前の武器ならば何の心配もなく戦える。お前は、俺が守れば好きなようにやれると言ってくれた」
「ああ」
「共に戦えて、嬉しく、光栄に思う。クルル少佐」
 クルルは先程の熱を思い出しながら、くくっといつものように笑った。
「…終わらすのもったいねえけど、終わんねえと楽しいコト出来ねえもんな…行くぜ、少尉」
「ヤー」
 機体は急速に上昇した。

 

 ******

 

「ク〜ルル〜、今平気〜?」
「…取り込み中だけどいいぜえ」
「ケロロ!?」
「うわ、まずいとこ呼び出しちゃった?我輩デバガメ?」
「なんだ隊長、見てえのかい?」
「そんなわけないっしょ、状況どうかなーって思って。やっほ〜、ギロロ〜元気〜?」
「おい、クルル、ちょっとこの手を離…」
「いーじゃん今更隠すことじゃねえし」
「そういう問題じゃなくて…ッ…」
「あーほんとお取り込み中申し訳ないでありますが、軽く調査状況聞いていいかな〜」
「なんとか終わってるぜえ、コレが終わったらちゃんと送るからよ」
「ッ…、ケ、ケロロ、なんでお前こっちに通信できるんだ…?」
「ああ、事前にクルルから連絡貰っててさ、我輩だけ特別通信できるようにしてもらってるでありますよ」
「お前だけって、もし緊急事態の場合には…」
「いや、一応本部用もあるけどよ、映像つきなのは隊長用だけ」
「さぼっていちゃついてないか心配になってさ〜、当たらずとも遠からずってとこ?」
「…」
「なんちゃって、任務は何があっても全うすることは分かっているでありますよ、ま、どうせクルルが日程水増し請求したんだろうからさ」
「さすが隊長、くえねえなァ」
「あと2、3日くらい?まあ折角だから楽しい時間を過ごして満たして来るといいであります」
「ケ…」
「無事で帰って来るでありますよ〜じゃ〜ね〜ギロロ〜バッハハ〜イ」
「…古いなァ」
「…」
「…じゃ、そゆことで」
「何が『じゃ』だ!クルルっ、おいっ」
「楽しいことはあとにとっとけっつったの先輩だぜェ」
「…そういうことはしっかり覚えているんだな」
「そ。都合のいいことは忘れて、大事なことは当然忘れない」
「ク…」
「アンタはいくら追求しても満足しねえからなァ、ま、時間もたっぷりあるし、よろしく頼むぜえ」

 

 出立からきっちり1週間。本部への報告を終えた二人はにこにこといやらしく笑うケロロの出迎えを受けた。

 


こんなんでましたけど〜(古すぎだよ)知識が適当ですいません〜
自分でも何がしたかったのかよく分かりません…(死)
てか、背中合わせが書きたいがために出した新兵器、あまり生かせなくて悔しい…
まあ、2作目なんで今後に期待してくださ…

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